第39回関東身体障がい者水泳選手権大会――運営サポートで見えた競技の特性と選手の意識【レポート】

第39回関東身体障がい者水泳選手権大会

2026年2月8日(日)、東京パラリンピックの会場でもあった東京アクアティクスセンターにて「第39回関東身体障がい者水泳選手権大会」が開催されました。私たちも現地でお手伝いをさせていただきました。当日は都心でも大雪に見舞われ、交通機関の乱れもありましたが、大会は無事に執り行われました。ご存じの通り船橋(千葉方面)では警報級の大雪でしたので、朝から止まりそうな京葉線にのり、なんとか会場までたどり着きました。

どんな大会なのか?

今大会は関東エリアの身体障がい者を対象とした地域選手権です。会場は東京アクアティクスセンターのメインアリーナではなく、併設されているサブプール(サブアリーナ)を使用して行われました。本大会の特徴として、参加資格が身体障がいのある方に限定されており、知的障がいのクラスの設定がなかった点が挙げられます。

以前もお伝えした、習志野市の国際水泳場にて行われた日本選手権(日本パラ水泳選手権など)をサポートした際には、大学の部活動に所属する若手選手が数多く出場していましたが、今大会はそれに比べると大学生年代の参加は少なく、幅広い年齢層の社会人選手が中心となっている印象を受けました。

ただし、大会記録に目を向けると、パラリンピック金メダリストである木村敬一選手をはじめ、日本を代表するトップアスリートたちの名前が数多く並んでいます。パラ水泳において、この関東選手権が国内主要大会の一つとして、記録を狙う重要な場として位置づけられていることが分かります。大学生選手が少なかった点については、他の強化合宿や遠征、あるいは競技レベルに応じた大会選択の結果なのかなと思います。

選手の方が教えてくれた

パラ水泳は、障がいの種類や程度に応じて細かくクラス分けがなされていますが、もしかしたら皆さんもご存じかもしれません、現場で最も特徴的な光景の一つが視覚障がいクラスにおける「タッピング」というものになります。

全盲に近いクラスの選手は、自力で壁との距離を測ることが困難です。そのため、プールの両端には「タッパー」と呼ばれる補助者が待機します。タッパーは、「タッピング棒(先端にスポンジやゴムがついたもの)」を使用し、選手がターンやタッチを行う直前に、その頭部や体に触れて合図を送ります。

このタッピングは、単に安全を確保するだけでなく、競技結果を左右する極めて高度だと言われています。合図のタイミングがわずかにずれるだけで、選手はターンで失速したり、壁に強く接触して負傷したりするリスクがあります。選手とタッパーの間には、反復練習によって培われた精密な連携が求められます。このように、パラ水泳はご自身だけではなく補助者との高度なチームワークだったり、それ以外にもそれぞれの障がいの中で現状肢体を最大限活用してどのように泳ぐかを皆さんが考え実践し成立している側面があることを改めて実感しました。
今回大会運営に参加されている方に実際の選手の方(当日も競技に参加されながら空いた時間に運営のお手伝いをされていました)がいらっしゃって少し話をお伺いできたのですが、最初タッパーの方と呼吸があわずうまくターンやタッチができないケースが多かったけどそれも最近はうまくいっていて逆に一人では無いんだと思えて頼もしいですよと教えてくれました。タッパーの方もご一緒だったのですがとても息の合ったお二人でした。

メインアリーナでも大会が開催

ここで、今回の国内大会の背景にある、世界のパラスイミングの現状についても触れておきます。

現在、パラ水泳は国際パラリンピック委員会(IPC)の管轄下にある「ワールドパラスイミング(WPS)」によって国際ルールが統一されています。昨年の頭にランク分け(障がいの重さによるクラス分け)の基準も少し変わり、日本でも追随する動きがありました。世界的に競技のプロ化・高速化も少し進んでおり、水中動作のバイオメカニクス解析などが盛んに行われています。

特に欧米諸国では、障がい者スポーツが「福祉」の枠組みを超え、一つの「エンターテインメント・スポーツ」として確立されています。イギリスなどのスポーツ先進国では、オリンピックとパラリンピックの強化方針が一体化されており、トレーニング環境やコーチングの質において差がなくなっているようです。

日本国内においても、東京2020大会以降、練習環境の整備は進んでいますが、今大会のように地域レベルの大会では依然としてボランティアの協力が不可欠です。トップ層の強化と、地域における競技人口の裾野の拡大をいかに両立させるかが、今後の日本のパラ水泳界の大きな課題といえるでしょう。
実は当日メインアリーナでは東京都の健常者の大きな大会があったようで、比較的若い選手たちが大勢いましたし、大きなアリーナが結構な数の観客で埋まっていました。小さい子供の選手はこちらの大会にも興味があるようで「何の大会ですか?」と何人かに聞かれました。「障がい者の水泳大会です」と答えるとごくごく自然に「へーすごい!」と答えて少しだけそとから競技を見学したりしていました。こちらで競技をしている子供も健常者の大会に参加している子と知り合いの子もいたみたいです。横から見ている何もわかっていないレベルの私ではありますが、そんな私が思っているよりもお互いを受け入れる気持ちを普通に持っているな(だったら良いな)と思わせる場面でした。

現場で感じた選手の意識とマナーの高さ

運営をサポートする中で、技術面以上に印象に残ったのが、参加選手の意識の高さです。 当日は大雪の影響により、会場到着が競技開始直前になってしまった選手も少なからず見受けられました。コンディション調整が非常に難しい状況であったにもかかわらず、多くの選手が落ち着いて受付を済ませ、自身のレースに集中していました。

また、特筆すべきは選手たちの礼儀正しさです。運営スタッフに対して「おはようございます」という挨拶はもちろん、レース後やサポートを受けた際に「ありがとうございました」と明確に言葉で謝意を伝える選手が非常に多いことに驚かされました。スポーツマンとしての自律した精神が、競技力の向上と同じくらい大切にされていることが伝わってきます。

自己ベストを更新して喜ぶ方もいれば、思うような結果が出せず悔しさを露わにする方もいましたが、全体として「ルールを尊重し、周囲への感謝を忘れない」という空気が会場を支配していました。毎回思うのですが、これは、障がいの有無にかかわらず、あらゆるスポーツイベントにおいて模範となるべき姿勢であると感じました。

最後に

今回の「第39回関東身体障がい者水泳選手権大会」は、雪という悪条件の中ではありましたが、選手それぞれの「今」の全力が見える素晴らしい大会でした。

個々の選手が自らの限界に挑む姿、それを支えるタッパーや審判員、そしてボランティアスタッフ。そこには、一つの目標に向かって多様な人々が役割を果たす、スポーツの健全なエコシステムが存在していました。

今回学んだ「創意工夫の精神」と「高いスポーツマンシップ」を大切にしながら、ふなばしスポーツとしても、地域におけるスポーツ環境の充実に寄与していきたいと考えています。大雪の中、頑張って会場までたどり着いて大会に参加された選手の皆様、サポートをされて笑顔で応援をしていたご家族やコーチ、仲間の皆さん、そして運営に関わったすべての皆様に敬意を表したいと思います。雪がそうさせてくれたのもありましたが、たどり着くまでの困難があった分、充実した時間をすごせました、どうもありがとうございました。