「静かな働き方」という本に教わった、少し肩の力を抜くということ|仕事を「ほどほど」にする勇気とバランス感(レビュー)

静かな働き方

最近、一冊の本を読んで、少しだけ自分の「働くこと」に対する考え方が変わった気がしています。

それは、シモーヌ・ストルゾフさんというアメリカ在住のライターで元デザイナーの方が書いた『静かな働き方(原題:The Good Enough Job)』という本です。たまたま立ち寄った書店で、ふと目に留まったそのタイトルに惹かれて手に取り、パラパラと読み始めたのがきっかけでした。ちょうどその時期は仕事がうまくいかず、少しだけ気持ちが沈んでいた時期でもありました。そんなときに出会ったこの本には、心がほどけるような言葉がたくさん詰まっていました。

仕事は「ほどほど」でいい——本が伝えてくれるシンプルなこと

この本が伝えてくれるメッセージは、端的に言えば「仕事を人生のすべてにしないこと」です。もう少し丁寧に言うと、「仕事にのめり込みすぎなくてもいい」「仕事だけで自分の価値を決めないでいい」「もっと大切なものは他にもある」ということ。

冒頭では、「仕事とは基本的に“お金を稼ぐ手段”であって、それ以上のものではない」という考え方が紹介されています。つまり、仕事で成功したからといって自分の価値が上がるわけではないし、逆にうまくいかなかったからといって価値が下がるわけでもない。それよりも、自分が何に価値を見出すか、自分らしく生きられているかのほうが、ずっと大切なんだというメッセージが、じんわりと、でも力強く伝わってきます。

タイトルにある“静かな働き方”とは、決して「何もしない」「頑張らない」という意味ではありません。「ちょうどよく働く」「ほどほどを知る」「仕事にすべてを預けない」という、バランス感覚のようなもの。英語の副題にある“Good Enough Job”という言葉が象徴的で、「足るを知る者は富む」という東洋的な価値観にも通じています。

「そこはお前の居場所じゃない」—胸に残ったエピソード

読み進めるうちに、さまざまな職業・立場の人たちへのインタビューが登場し、それぞれがどのように仕事と距離を取り、どんなふうに「自分の人生」を選び取っているかが描かれています。著者自身の体験談も混ざっていて、これがまたとてもリアルで、どこか親しみやすいのです。

なかでも心に残ったのは、(確か)若いころのシモーヌさんご自身だったと思うのですが、あまり好きではない仕事に悩み、お父さんに愚痴をこぼしたときのエピソードです。お父さんはこう言ったそうです。
「そこ(職場)はお前の居場所じゃない。ぐちぐち言ってないで、さっさと仕事を終わらせて家に帰ってこい。」(ちょっと本の細かな表現は違ったかもしれません…)

この言葉には、なんともいえない優しさと強さがあると感じました。働く場所や内容に悩むこと自体は悪くない。でも、それに心を全部持っていかれてしまってはいけない。たとえ一時的にうまくいかなくても、仕事が「すべて」ではないから、大丈夫。家に帰ってきて家族と一緒に過ごして楽しめばいい——そんなメッセージが、すっと胸に入ってきたのです。

働くことは大切、でもそれだけじゃない

ふりかえってみると、私自身もいつの間にか「仕事=自分の価値」みたいな図式をどこかで信じていたように思います。仕事で成果が出ないと自己肯定感が下がり、評価が気になり、人の目が気になり……。気がつくと、仕事のことで頭がいっぱいで、家に帰ってもメールをチェックしていたり、明日の会議のことを考えて落ち着かない夜を過ごしたりしていました。

でも、この本を読んでから、少しずつ気持ちの切り替えができるようになりました。「まぁ、仕事だし」「いろいろあっても仕方ない」「それよりも、今日の夜ごはん何にしようかな」と思えるようになったのです。

今では、仕事が終わったらすぐに家に帰ることを自分にとって大切な優先事項として捉えています。何かミスしてしまっても、「まぁ、そんな日もあるさ」と受け流せるようになったことは、小さくて大きな変化だと思います。

「自分らしい働き方」に立ち止まってみる

少し本の本質とは違いますが、最後に個人的な意見を少しだけ。
スポーツの世界でもそうかもしれませんが、こと仕事となると、どこか「全力で」「限界まで頑張ること」が美徳のように語られがちです。もちろんそれが素晴らしい結果に結び付くこともあると思います。でも、それって誰にとっても本当に健全なことなのでしょうか。

『静かな働き方』は、その問いに「そんなことないよ」とやさしく応えてくれる本です。がむしゃらに頑張るのももちろん素敵だけど、自分らしさを考えてみたら「少し立ち止まって深呼吸してもいい」「走らない日があってもいい」のではないか、そんなメッセージが心をじんわりと温めてくれます。

働くことは、人生の一部。でもすべてではない。

そんな当たり前のようで、忘れがちなことを、改めて思い出させてくれた一冊でした。



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