学生が繋ぐパラスポーツの輪。第15回長谷川良信記念・車いすバスケットボール全国選抜大会【レポート】

第15回長谷川良信記念・千葉市長杯争奪車いすバスケットボール全国選抜大会

2月21日、22日の2日間にわたり、千葉ポートアリーナにて「第15回長谷川良信記念・千葉市長杯争奪車いすバスケットボール全国選抜大会」が開催されました。節目となる15回目を迎えた今大会。会場でその熱狂と温かさを肌で感じてきました。大学生が主体となって作り上げる「手作りの全国大会」が、地域とスポーツにどのような価値をもたらしているのか。実際現場の様子をレポートします。

15年の歩みと、長谷川良信氏の志を継ぐ大会

冬の寒さが和らぎ始めた2月下旬。千葉ポートアリーナのメインアリーナには、関東近郊や宮城県などから選抜された強豪6チームが集結しました。

この大会は、淑徳大学の創立者であり、日本の社会福祉教育の先駆者である長谷川良信氏の功績を記念して始まったものです。「共に生きる」という精神をスポーツの場に具現化すべく、千葉市と淑徳大学、そして千葉市スポーツ協会が連携して開催を続けてきました。

15回目という節目を迎えた今回は、千葉ホークス、埼玉ライオンズ、NO EXCUSE、宮城MAX、ワールドBBC、COOLSという、国内トップクラスのチームが参加。車いすバスケットボールの真髄である「格闘技のような激しさ」と「緻密な戦略性」を兼ね備えた、非常に見応えのあるトーナメントが展開されました。

学生の皆さんが大活躍。地域課題を解決する「大学連携」の力

今大会の最大の特徴は、淑徳大学の学生たちが大会運営の根幹を担っている点にあります。これは単なる学生ボランティアの域を超え、千葉市と淑徳大学による包括連携協定に基づいた「地域課題の解決」に向けた取り組みの一環でもあります。

会場に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、元気な挨拶で迎えてくれる学生たちの姿です。受付業務はもちろんのこと、試合中のコートを素早く拭き上げる「モッパー」、得点板の操作、さらには事前準備の企画立案に至るまで、大会のあらゆる場面に学生の姿があるとのことでした。

彼らが担当しているのは、決して「裏方」だけではありません。SNSやイベント企画など、観客を飽きさせない工夫の随所に学生らしいフレッシュなアイデアが散りばめられていました。

学生たちが責任を持って一つの全国大会を運営するという経験は、彼らにとって大きな成長の機会となります。同時に、良い意味で一般人に近い感覚を持っている大学生が運営を担うことで、行政や競技団体だけでは手が届きにくい「親しみやすさ」や「市民参加のしやすさ」が生まれている。これこそが、千葉市が取り組む大学連携の理想的な姿であると感じました。

真剣勝負と、手作り感のある「温かさ」の共存

車いすバスケットボールそのものの魅力も、今大会では存分に発揮されていました。 コートを激しく駆け抜ける競技用車いすのタイヤの焦げる匂いや、激しい接触による衝撃音。選手たちの真剣な表情からは、勝利への執念と競技への誇りが伝わってきます。

一方で、会場全体を包んでいたのは、どこか「温かくて柔らかい」雰囲気でした。それは、学生たちの丁寧なサポートや、手作りの装飾、観客一人ひとりに向けられた細やかな配慮から生まれるものです。

「スポーツの大会」というと、どうしても勝ち負けや記録の厳しさが前面に出がちですが、今大会には「誰でもこの場所にいていいんだ」と感じさせてくれる包容力がありました。競技としての高いレベルを維持しながら、一方で初めてパラスポーツに触れる人々を拒まない敷居の低さ。この絶妙なバランスが、15年という長い歳月、多くの人に愛されてきた理由なのでしょう。

多彩なイベントが彩る、会場の一体感

試合以外にも、会場の内外では大人から子供まで楽しめるイベントが多数用意されていました。 今回、特に印象的だったのが、2階ホワイエで行われた「体力テスト」や「車いす体験会」です。

体力テストのコーナーでは、様々な種目の体力測定が行われ、上位の方は順位が表示される仕組みになっていました。これに挑戦する子供たちが非常に多く、自分の順位が出ると「もう一回やりたい!」と何度も列に並び直す姿が見られました。目を輝かせながら楽しそうに何度も何度も挑戦する子供たちの姿は、まさにスポーツの原点を見ているようでした。また参加するときには「宜しくお願いします!」、終わった時には「ありがとうございました!」と大きな声で挨拶している子供たちに逆に学ぶ人も多かったと思います。一方で体力自慢の大人な方々をはじめ、年齢、性別などに関係なく自分にチャレンジということでたくさんの方が参加されていてとても楽しそうに見えました。

また、車いす体験会では、実際に競技用車いすに乗った子供たちが、その操作の難しさと楽しさを同時に体験していました。「思ったより速い!」「ターン難しい!」といった驚きの声が上がり、競技をただ「見る」だけでなく「体感する」ことで、選手たちへのリスペクトが自然と育まれていく様子が伺えました。

さらに、千葉市のギフトなどが当たる抽選会も開催。地元千葉の魅力を再発見できるような仕掛けがあり、車いすバスケットボールを軸に、地域の文化やコミュニティが重なり合う豊かな空間が創出されていました。

持続可能なスポーツコミュニティを目指して

今回の会場に行って改めて感じたのは、こうした「地域に根ざした、温かくて素敵なイベント」を長く続けていくことの価値です。

パラスポーツは、特定の人のためのものではありません。障がいがある人もない人も、学生も社会人も、子供も高齢者も。スポーツという共通言語を通じて一つの場所に集い、同じ感動を共有する。この「当たり前の共生」が実現できている場所は、実はそう多くありません。

ふなばしスポーツが掲げる「誰もが気軽に参加できるスポーツコミュニティ」という理念とも、今大会のあり方は深く共鳴しています。運営側の学生たちが、時には選手と話し、時には観客の子供たちと触れ合いながら、自分たちが主体となって場を盛り上げようとする姿勢。そこには「支える側」もまた「楽しむ側」であるという、健全なスポーツ文化の姿がありました。

大会が15回を重ねる中で、かつて子供として観戦に来ていた子が大学生になり、今度は運営側として参加している例もあるかもしれません。そうした「バトンの継承」が、地域のスポーツシーンをより豊かにしていくはずです。

大盛況の会場で

2日間にわたる第15回長谷川良信記念大会は、大盛況だったと思います。 勝利を手にしたチームも、惜しくも敗れたチームも、そして運営を支え切った学生たちも。会場にいたすべての人々が、車いすバスケットボールという競技を通じて、何かしらの熱量を受け取ったことでしょう。

千葉市と淑徳大学が築いてきたこの素晴らしい連携の形を、一過性のイベントで終わらせることなく、船橋をはじめとする周辺地域にも良い刺激として広げていきたい。そう強く感じさせる、実りある2日間でした。

このような温かいイベントが、今後も20回、30回と続いていくことを心から願っています。私たちもその歩みを、地域の一員として、そしてスポーツを愛する仲間として、これからも応援し続けていきます。