「普通に面白い」という最強の魅力。映画『だれもが愛しいチャンピオン』を観て

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先日、家族から「面白そうだよ」と勧められた映画がありました。それが、スペイン映画の『だれもが愛しいチャンピオン』(原題:Campeones)です。

私は自宅でコーヒーを片手に観てみたのですが、これが予想以上に「良い意味で普通に面白い」作品でした。今回は、この映画が持つ軽やかな魅力と、私たちが普段接しているスポーツの風景について、肩の力を抜いて書いてみたいと思います。

エリートコーチと凸凹チームの「ズレ」を楽しむ

物語のあらすじは、至ってシンプルです。

主人公のマルコは、プロのバスケットボールチームでコーチを務めるエリート。しかし、性格に少々難ありで、試合中のトラブルや飲酒運転といった不祥事を起こしてしまいます。そこで裁判所から言い渡された社会奉仕活動が、知的障がい者のバスケットボールチーム「アミーゴス」を指導することでした。

「まともなバスケなんてできるわけがない」

当初のマルコは、そんな偏見を隠そうともしません。一方の選手たちは、マルコのそんなイライラなどお構いなし。集合時間に遅れるのは当たり前、試合中に勝手にどこかへ行ってしまう、戦術以前に自分の好きなことを喋り続ける……。

この「噛み合わなさ」が、まずはコメディとして純粋に面白いのです。スポーツ映画というと、厳しい特訓を経て奇跡の勝利を掴む、といった熱血展開を想像しがちですが、この映画はもっともっと「人間味」に溢れています。マルコが頭を抱えれば抱えるほど、観ているこちらは思わずクスッと笑ってしまう。そんなドタバタ劇が物語のベースにあります。

「偏見がない」という、うらやましいほど率直な生き方

映画の公式ホームページに、非常に印象的な紹介文がありました。

「この映画では知的障がいを持つ人々の世界が魅力的に描かれています。彼らは誠実に、そして自然に生きています。また、基本的に何に対しても偏見を抱かず、うらやましいほど率直に思っていることをそのまま口に出します。」

作品を観終わって、まさにこの通りだなと感じました。

彼らは、自分の感情をフィルタリングしません。楽しい時は全力で笑い、不満があればその場ですぐに言う。そして何より、相手が「プロのコーチ」だろうが「偉い人」だろうが、フラットな態度で接します。

私たち大人は、社会生活の中でどうしても「空気を読む」ことや「相手の肩書き」を意識して、言葉を選んでしまいがちです。しかし、映画の中の選手たちは驚くほどストレートです。その率直さは、時に周囲をハチャメチャに混乱させますが、同時に観ている側の心をすっと軽くしてくれる清々しさがあります。

「障がいがあるから」ではなく、彼ら自身のキャラクターがとにかく強烈で個性的。映画を観ているうちに、視聴者である私たちもマルコと同じように、彼らを「障がい者チーム」としてではなく、一人ひとりの「アミーゴス(友人)」として認識していくようになります。

「過剰じゃない」描き方が心地よい

正直に言うと、障がい者をテーマにした映画を観る際、「感動させよう」「泣かせよう」という演出が強すぎると、少し身構えてしまうことはありませんか? 私自身、現場で活動している身として、あまりに情緒的な描かれ方には少し違和感を覚えてしまうこともあります。

しかし、この『だれもが愛しいチャンピオン』には、そうした「押し付けがましさ」がほとんどありません。

出演している選手役の方々は、実際に知的障がいを持つ方々が演じています。彼らのしぐさや表情、会話の間合いなどは、演出だけでは作れないリアリティと愛嬌に満ちています。もちろん映画としてのストーリーはありますが、描かれているのは「特別な悲劇」でも「過剰な英雄伝」でもありません。ただ、そこにある日常の風景や、彼らなりの解釈で世界を捉えている姿です。

映画の中で、彼らがふとした瞬間に見せる驚くような解釈や行動。それが笑いを生み、いつの間にか観客を味方につけてしまう。この「自然体」な雰囲気が、作品全体をとてもやさしいものにしています。

私たちが普段見ている「あの感じ」

この映画を観ていて、「あ、これ船橋アリーナや地域の大会で見かける風景に似ているな」と思うシーンがいくつもありました。

例えば、試合に少し集中しきれてなかったり、得点を決めた後にとにかくみんなで喜びまくるあの感覚。相手がいる競技スポーツのマナーなど厳格なことを言えば少し「NGな行動」なのかもしれませんが、その場にいる全員が笑顔になってしまうような、あの独特の空気感です。

私たちが「ふなばしスポーツ」として大切にしたいのは、まさにこうした「誰もが排除されず、その場にいることを楽しめる」環境です。

スポーツは本来、自由なものです。 速く走ること、高く跳ぶこと、正確にシュートを決めることだけが価値ではありません。隣の人と笑い合い、体を動かす爽快感を共有する。この映画は、そんなスポーツの原点にある「楽しさ」を、理屈ではなく映像で伝えてくれます。

「チャンピオン」って、なんだろう

映画のクライマックス、彼らはある大きな試合に臨みます。

結末は、ぜひ皆さんの目で確かめていただきたいのですが、観終わった後に「なんでこんなに清々しいんだろう」という不思議な感覚になるはずです。

「勝つこと」を唯一の目的としてきたマルコが、最後に手に入れたもの。そして、選手たちが試合後に見せる満面の笑み。

それを見ていると、チャンピオンという言葉の定義が、自分の中で少し書き換わるような気がします。誰かと競って勝つことだけでなく、自分たちの「全力」を出し切り、それを仲間と一緒に肯定できること。それができれば、もうその時点で誰もがチャンピオンなのだと、肩の力を抜いて思わせてくれるのです。

まとめ:週末の「ゆるい観賞」にぜひ

この映画は、重いテーマを抱えた社会派ドラマではありません。あくまで、ハチャメチャに楽しくて、最後にはちょっとだけ心が軽くなるスポーツ・コメディです。

障がい者スポーツに興味がある方はもちろんですが、「最近ちょっと忙しくて疲れたな」「スポーツの楽しさを再確認したいな」という方にこそ、ぜひおすすめしたい一本です。

ふなばしスポーツの活動現場でも、この映画のような「率直さ」や「ユーモア」を大切にしていきたい。そんなことを思いながら、また次の週末、地域の皆さんとスポーツを楽しめるのを楽しみにしています。

船橋の街で、または競技会場で。 映画のような素敵な笑顔に出会えることを願っています。

皆さんも、ぜひ一度ご覧になってみてください。

公式ホームページ
https://synca.jp/champions/