第42回日本パラ水泳選手権大会 ― それぞれの「最速」に込められた努力と工夫

新習志野で開かれた全日本大会
11月1日・2日の週末、新習志野にある千葉県国際総合水泳場で開催された「第42回日本パラ水泳選手権大会」に、1日のみお手伝いとして参加してきました。
この大会は、木村敬一さん、鈴木孝幸さん、山口尚秀さんといったパラリンピックメダリストをはじめ、全国からトップアスリートが集まる日本最高峰の大会の一つです。
会場に足を踏み入れると、独特の緊張感と集中の空気がありながらも、選手やスタッフの表情にはどこか穏やかさが感じられました。久しぶりに再会する選手同士の笑顔や、サポートスタッフとの息の合ったやりとりが印象的でした。
クラス分けが生み出す多様なレース
パラ水泳の特徴の一つに、障がいの種類や程度に応じてクラス分けが行われる点があります。大きくは「肢体不自由」「視覚障がい」「知的障がい」の3つのカテゴリーに分かれ、それぞれにまた分類がされています。
おおまかに言うと、クラス1〜10が肢体不自由(動かすのが厳しい状態や部位などで数字が決まります)、11〜13が視覚障がい、14が知的障がいとなっていて、それ以外にも国内では聴覚障がいの方などが属する15というカテゴリーもあります。
このため、ひとつのレースに異なるクラスの選手が出場することも多くあります。順位は同じでも、クラスごとに評価が行われるため、同じレースの中で複数の「1位」が生まれることもあります。観ている側からすると少し不思議に見えるかもしれませんが、それぞれが自分の条件の中で最速を目指すという点に、この特徴があります。
選手の泳ぎ方にはそれぞれ個性があります。
肢体不自由のクラスでは、左右のバランスや可動域の違いを補うため、身体の使い方を細かく工夫されています。視覚障がいの選手は、壁の位置を知らせるタッピングの合図を頼りに正確に距離を取ります。知的障がいのクラスでは、集中力の維持やリズムの安定が重要になります。
同じ距離を泳ぐ中にも、それぞれの工夫や技術があり、その多様さこそがパラ水泳の大きな特徴だと感じています。
競技を支える人たちと、選手の丁寧な姿勢
今回は大会スタッフとして、選手がレース後に立ち寄る受付の対応を担当しました。レースを終えた選手と直接言葉を交わす場面もあり、短い時間ながら印象に残るやりとりがいくつもありました。
ある選手は、息を整えながら「ありがとうございました」と笑顔を向けてくれました。
別の選手は控えめに会釈をしながらも、その表情に達成感がにじんでいました。また、しゃべるのはあまり得意でないのか、最初は少し照れながらもご自身の課題や努力を一生懸命に伝えてくれる方もいらっしゃいます。
どの方も、周囲への感謝を忘れずに行動されていて、その姿勢がとても印象的でした。競技者としての誇りと礼儀が自然に身についている方が多く、接しているこちらが気持ちを正されるような場面もありました。
また、一緒に同じ場所でお手伝いをしたボランティアの方や協会の方のサポートなどもあり、とても楽しくサポートをすることができました。全体的にも高校水泳部の方々の参加などもありサポートされている方々皆さんの一体感を感じられたことは、とても良い経験でした。
自分に合った「最速」を目指して
パラ水泳を見ていると、「速さ」の意味が一人ひとりで違うことに気づきます。
健常者の大会では、記録はもちろんフォーム美しさにも注目されることがありますが、ここではそれぞれの身体の特性に合わせた“最適な泳ぎ”が追求されています。良い意味でそれは個性でもあり私はとても美しく感じます。どの選手も、ご自身の課題を理解し、それを克服するための努力を重ねてそこにたどり着いたんだと思います。
片腕で力強く進む選手、上半身の動きでリズムをつくる選手、ドルフィンキックだけで進む選手、タッピングを頼りに最後まで正確なピッチを保つ選手。誰もが自分の「できる動き」を最大限に磨き上げており、その工夫や集中力に心を打たれます。
順位やメダルだけではなく、「自分の泳ぎを更新すること」に価値を置くその姿勢に、スポーツの原点のようなものを感じました。
違いを超えてつながる場所
パラ水泳の大会を見ていて、いつも感じるのは「違い」を越えてつながる力です。
クラスや種目、障がいの種類といった枠を超えて、それぞれが自分の限界に挑み、互いを称え合う光景があります。
競技そのものは個人戦ですが、会場全体にはチームのような一体感があり、「誰もがこの空間を支えている」という意識が自然と生まれています。
そして、その空気をつくっているのは、選手だけではありません。
先にも書きましたが大会運営に関わるボランティアの方、サポートスタッフはもちろん、観客、家族――多くの人が、それぞれの立場でこの大会を支えています。
ひとつのレースを終えた後の拍手や声援には、そうした人たちの思いが混じり合っていて、静かな中にも確かな温かさを感じます。
まとめ
今回の日本パラ水泳選手権大会で、あらためてスポーツの「多様性」と「可能性」を目の当たりにしました。
競技スタイルの違い、身体の違い、目指すものの違い――それぞれが違っていても、どの選手も自分なりのベストを追い求めています。
その姿があるからこそ、パラスポーツには見る人の心を動かす力があるのだと思います。
短い時間ではありましたが、この大会に関わることができたことを心からうれしく思います。
また次にお会いできる機会を楽しみにしながら、ふなばしスポーツとしても、引き続きパラスポーツの魅力を発信していければと思います。


